2012年01月31日

◎「あの川のほとりで・下巻」(ジョン・アーヴィング)

「あの川のほとりで・下巻」(ジョン・アーヴィング)(新潮社、2011年12月)

あの川のほとりで〈下〉 [単行本] / ジョン アーヴィング (著); John Irving (原著); 小竹 由美子 (翻訳); 新潮社 (刊)

下巻は上巻に続く第三章の途中、新たなドラマが展開する場面から始められる。
ここから先は、特に時代を前後する回想シーンが多く挿入され、過去の出来事の整理に加え、作家となったコックの息子ダニエルの作品内容と共に、今後の展開への予感が強く示唆されていく。

「事故が起こりがちな世の中だ」とコックのドミニクが呟くシーンがあるが、まさにそのとおり。1983年にヴァーモント州を離れ、故国アメリカを離れカナダのトロントへと向かうコックの父子。

そして、物語の舞台はオンタリオ州の湖に浮かぶ小島を経て、元のニューハンプシャー州の山奥、コーアス郡へと向かう。最後に明かされていく、いくつかの真実と人の生死。最後まで読み手の心をとらえながらドラマを展開させていく手腕はさすが。物語を陰で動かしていくケッチャムという人物の存在が重要なモチーフとなっている。

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posted by Peperoni at 20:44| Comment(0) | ◎特におすすめの本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月30日

◎「あの川のほとりで・上巻」(ジョン・アーヴィング)

「あの川のほとりで・上巻」(ジョン・アーヴィング)(新潮社、2011年12月)

あの川のほとりで〈上〉 [単行本] / ジョン アーヴィング (著); John Irving (原著); 小竹 由美子 (翻訳); 新潮社 (刊)

カナダ国境に近い米国東部、ニューハンプシャー州の山中深い木材伐採地から始まる物語。上下巻合わせて777ページと言うボリュームは、この著者らしく実に読みごたえがある。1954年の春、ある一人の少年の死から始まる物語は、その木材伐採地で食堂を営んでいたコックの父と12歳になる息子の人生を追いかけながら、以降半世紀にわたり場所を変え、時代を前後しながら語り継がれていく。

160ページ余りの第一章を読み終えるのに、何と4日間もかかってしまった。とっつきにくい小説だなあというのが第一印象で、何よりも登場人物たちがさまざまな呼び名で描かれていくところに戸惑いを覚えた。

さらに、土地柄のゆえか、性と暴力に満ちたエピソードに事欠かないので、このあたり生理的に受け入れがたい読み手も多いはず。しかしながら、この章に書かれている内容をしっかり把握していないと、以降の展開についていけず、何度も第一章を読みかえすはめになるはずなので、結果として時間がかかったのは正解。

さすがに現代アメリカを代表する稀代のストーリー・テラーの作品。時代の流れとともにドラマが動き出す第二章以降は、すらすらと読み進めることが出来る。
上巻は第三章までで、1954年のニューハンプシャー州の山奥から、13年後1967年のボストンへ、そしてアイオワ時代を経て1983年のヴァーモント州の小さな町へと移り住んでいく、コック父子の人生を追いかけていく。
(以降 下巻へ)
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2012年01月29日

○「アネネクイルコ村へ」(岩田宏)

「アネネクイルコ村へ」(岩田宏)(みすず書房、2011年12月)

アネネクイルコ村へ―― 紀行文選集 (大人の本棚) [単行本] / 岩田 宏 (著); みすず書房 (刊)

時おり手に取りたくなる、みすず書房「大人の本棚」シリーズの最新刊。
月二回送られてくる「みすず書房」のニュース・レター(メルマガ)の宣伝コピーを読んでいると、無性に手に取りたくなる本があるのだ。今回の本もその口。
副題に付けられていた「紀行文選集」という言葉と、『紀行文は紀行文に親和する、、、ちょうど、犬たちの最大関心事が他の犬たちであるように、、、』という宣伝コピーにいたく惹きつけられたのだった。


1960年代から70年代にかけて出かけたソビエト、イタリア、フランス、そしてメキシコについての紀行エッセイが多数収録されている。ちょうど、海外旅行が特権的なものから大衆的なものへと変化していく時代であり、小田実の「何でもみてやろう」や五木寛之の「さらばモスクワ愚連隊」などに触発されて、若者たちが海外一人旅を目指した時代でもあった。その当時ならでは時代背景と社会情勢もエッセイの中に垣間見え、この30〜40年間の日本人旅行者の視点の変化も興味深い。

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タグ:岩田宏
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2012年01月28日

△「君のいない食卓」(川本三郎)

「君のいない食卓」(川本三郎)(新潮社、2011年11月)

君のいない食卓 [単行本] / 川本 三郎 (著); 新潮社 (刊)

今は亡き、著者の奥さま(恵子さん)に癌が見つかったのが2006年、その病気療養中に引き受けた「食に関する」連載エッセイ。(UCカード会員誌「てんとう虫」2007年4月号〜2010年3月号)その当時、この仕事を引き受けるかどうか悩んだと川本さんは「あとがき」に書いている。それでも、「食は思い出とともにある」と考えた川本さんは、料理好きの奥さまのことを考え、余命の限られている間に、出来るだけ二人の時間を思い出しながら書き進めたという。

それだけに、その後発表された『いまも、君を想う』などに記された当時の心境をうかがわせる内容が目につく。昨年映画化された『マイ・バック・ページ』で、思わぬ形で脚光を浴びることになってしまった川本さんの戸惑いも、終盤に収録された書き下ろしの一編に表れている。

いずれのエッセイも、さりげない市井の食べ物を取り上げながら、記憶の中の風景と向き合う著者の姿が寂しげに綴られている。
タグ:川本三郎
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2012年01月25日

○「梨の花咲く町で」(森内俊雄)

「梨の花咲く町で」(森内俊雄)(新潮社、2011年11月)

梨の花咲く町で [単行本] / 森内 俊雄 (著); 新潮社 (刊)

とても逆説的な話だけれど、遠い未来にタイム・マシーンが発明されたとして、そのタイム・マシーンが古びてアンティークになった頃に、わざわざ作動させて過去を遡ったらこんな情景が見えるのかもしれない。

この老作家は、いとも簡単に時を飛び越えて、40年いや50年前の過去の情景を語り出す。その語り口は、今現在のことがらと過去の出来事を自在に絡み合わせて、独特の味わいをもたらしてくれるのだ。

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タグ:森内俊雄
posted by Peperoni at 19:22| Comment(0) | ○おすすめ(読みがいのある本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする